スーパーグローバル学部増田准教授

いかれた大学教員の思いつき

地方大学再編

もう一週間以上も前のことになるが、文部科学省は国公私立の枠組みを越えた大学の再編を検討しており、秋にも中教審に諮問するというニュースが流れた。

このニュースを見聞きして、信じたくないという人も少なくないであろうし、逆に期待に夢を膨らませる人もいるであろう。信じたくない人にとっては気の毒な話だが、先の文系廃止騒動やそれに続く国立大学の新課程廃止は、地方の高等教育機関のさらなる統合再編に向けた序章に過ぎないと見るべきだろう。
その意味で、独立行政法人化の際に島根大学との定員交換で作られた鳥取大学の地域学部は、まさに時代の先駆者であり偉大なヒトバシラーであった。そして今年、宇都宮大学の地域デザイン科学部、佐賀大学の芸術地域デザイン学部高知大学地域協働学部、福井大学国際地域学部など、地域への貢献を謳う新学部が相次いで誕生したが、この種の募集停止される新課程をはじめとする文系学部を核とした地域系の学部は各地で次々と登場してくることだろう。

そこへ今回の報道である。当事者のみなさんにしてみれば、必死の思いで新学部の設立にこぎつけたところで一体何を言い出すのかというところかもしれない。
しかし、これは何も突然降って湧いたような話でもないのである。

まず、私立大学の公立化の動きが加速している。今後は単体としての公立化だけでなく、既存の公立大学に私立大学を吸収合併して新たな学部とするような事例がいくつも出てくるだろう。
すでにその土台は整いつつある。

大学に地域志向の取組を求める風潮は、ここ数年急速に強まっており、平成25年度に始まった「地(知)の拠点整備事業」(大学COC事業)は、地方の国立大学は率先してそのニーズに応えよ、そのための資金を出すから内部改革せよという、アメとムチを兼ね備えた事業であったと言える。ところが国の事業としては珍しく、本来5年間の事業であったはずのCOCは、僅か2年でその方向性を大きく修正し、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」(COC+)へと展開する。これは、個々の大学が地域に根ざして活動するというよりは、大学の置かれた地域の求める人材をその地域で育てて排出することに主眼がおかれており、単独申請が基本であったCOCとは異なり、同じ地域の複数の大学が共同で申請することが求められていた。
もともとCOCは明らかに地方国立大学(と一部の有力な公立大学)をターゲットとしたものであり、1年目の採択結果はそれを裏付けるとともに、私立大学の大きな反発を招いた。その結果、私立大学にも広く門戸が開かれた形の2年目のCOCは、文部科学省が地方の無名の国立大学の底力、あるいは可能性に気づくきっかけとなっただろう。そこにやって来た地方創生の機運と予算にも乗る形でのCOC+の導入は、(しばしばFランなどと揶揄されながらも)地方で地域に密着して着実に人材を排出している、しかし経営的には脆弱な私立大学と、地方の国公立大学が共同で事業にあたるプラットホームの形成を促した。

そしてこのCOCとCOC+を通して得られた一定の成果が、文部科学省の国公私立の枠組みを越えた再編論を後押ししていると言えるだろう。
多くのCOC+は地方の公立大学が幹事校となっている。文部科学省が再編の核として想定しているのは明らかに地方の公立大学であり、経営難の私立大学を統合するだけでなく、できれば旧官立などを除いた大多数の駅弁国立大学や教育大学は、この際地元の自治体にお引き受けいただいて公立に移管してしまいたいというのが文部科学省の本音であろう。

少なくともそのような地方国立大学において、文系の学部学科を今の形のまま維持することを(今まさに叫び声を上げている当該学部学科の教員ではなく)当該地域が望むのなら、そのコストは地元の自治体に公立移管という形でご負担願うしかなさそうである。

果たして当事者となるであろう自治体と、変化を望まない当該分野の教員の皆様は、どのような道を歩むことになるのであろうか。世界ランカーを目指すスーパーグローバル大学も良いが、ポストCOC時代の地方大学にも要注目である。