スーパーグローバル学部増田准教授

いかれた大学教員の思いつき

オープンキャンパスへの意気込み

先月、女子高生に土下座で「お願い、1回だけでいいから」という、誤読を誘うヤル気満々コピーのゲスい広告で名古屋近辺の大学が全国にその名を轟かせたところであるが、高校野球も盛り上がりを見せる夏休みは、国公立大学を含め、多くの大学のオープンキャンパスが集中している季節でもある。この週末にも多くの大学でオープンキャンパスが開催されることだろう。

志望する大学の様子を確かめたいという前向きな高校生はもちろん、夏休みの宿題としてノルマを課されているので仕方なく適当なところに行っておくという後ろ向きな高校生であっても、オープンキャンパスへの参加は、その後の進路決定に直接的に影響を与えられる数少ない機会である。

したがって、私立大学にとってはオープンキャンパスに来てくれる高校生を増やすことが非常に重要であるとともに、オープンキャンパスでどのような体験を提供するかということも極めて重要であり、年間を通して最も力をいれるイベントとなっている。

そのようなオープンキャンパスに対する意気込み、あるいは自分たちの将来がかかっているという感覚が空回りすると、冒頭のような広告につながったりもするのであろう。こうした感覚は、どんなに忙しくなろうとも、名の知れた国公立大学でしか勤務したことのない教職員には永遠に理解されないことの一つだろうと思う。

ほとんど何もしなくても千人単位の高校生がオープンキャンパスに来るというのは、これまで体験したことのない身にとって驚くべきことだが、一方で、小規模大学では数十人から百人単位の高校生を集めるために、血を吐くような努力をしている。そして哀しいかな、それほどの努力を以ってしても、それ以上には集まらないのである。これは実際のところかなり辛い。まして、来場者が前年度割れというようなことになると、それは次年度入試の志願者減に直結することが分かっているので、精神的にもこたえる。

ともあれ、オープンキャンパスに参加してくれた高校生と言うのは、潜在的な、それもかなり有望な将来の顧客である。多かれ少なかれ関心を持って来てくれた高校生には、できればそのまま志願してもらいたい。それが安定的な学生確保への近道だからである。最大限の準備をして、大学の魅力を出来るだけ伝えたいというのが、規模の大小を問わず私立大学にとってのオープンキャンパスであり、国立大学のオープンキャンパスとは根本的に姿勢が異なっている。

正直なところ、一度で良いから大学に来て実際に見てもらえれば印象は変わるはず、と言うのは、それほど知名度が高くなく、規模も大きくなく、学生確保に苦労している(そしてしばしばFランなどと揶揄されていたりもする)が、自分たちの教育には自信のある大学に共通する思いではあるだろう。実際、そこには多くの人が持っているイメージとは随分違った光景があったりもするのだ。

各地でオープンキャンパスに参加する高校生のみなさんには、熱中症対策を万全にして、将来の進路を考える機会にしていただければと思うが、できれば複数の大学のオープンキャンパスを見比べて欲しい。また、オープンキャンパスの時だけでなく、可能であれば普段の日常の講義風景なども実際に見てもらいたい。まともな大学と教職員であれば、そのような面倒なリクエストにも協力してくれるであろう。