スーパーグローバル学部増田准教授

いかれた大学教員の思いつき

第2集団のジレンマ

国内の大学の上位集団を形成しているのは、国際的な舞台で競争することが求められる国立大学なのであるが、ランキング的なことで言えば国内の先頭あたりににいる旧七帝大と東工大に続く位置にいる、いわゆる第2集団、第3集団の大学をどうするのかというのが課題である。

概ね旧官立をベースとした総合大学である、筑波(天下りで話題の茨城はここではお呼びでない)、神戸、広島あたり、少しあいて千葉、新潟、金沢、岡山、熊本といったあたりになるだろうか。

このあたりの大学は、端っこの辛うじて旧帝大の2校とともに、常に大学改革への意気込みを試される位置にある。その結果、文科省に尻尾を振りつつ学内をしばき上げるといった対応を取らざるを得ないわけだが、ここに第2集団ならではのジレンマがある。

先だって一橋から香港科技大へ移籍する研究者の一連のツイートが話題となったが、スーパーグローバルであれなんであれ、大学としてグローバルに競争するということは、グローバルな研究者の移籍市場・争奪戦にも嫌が応にも参入することになるという自覚が必要である。ではあるが、個々の大学はもちろん、文科省にもそのような自覚は無く、そのための制度的な基盤も無いということが問題である。結果的に、優秀な研究者を抱えていればいるほど、草刈り場になる危機にある。

実際、これら第2集団の大学から旧帝大へ移籍する研究者は少なくないのが現実であるし、優秀であればあるほど、旧帝大を飛び越えて海外へと移籍する研究者も増えるだろう。旧帝大と言えど、国際的な研究者の獲得合戦となるとその競争力は疑問である。

結局、今のランキング対策を見据えた評価基準で高い評価を受けられる研究者が活躍すればするほど、引き抜かれる可能性は高まるが、限られた資金では積極的に引き止める術はなく、下手をするとOBでなければ残ってもらえず、大学としての質が低下するという事態が待っているという未来は容易に想像できてしまう。

グローバルな大学間競争で勝ち抜くために、新しい指定国立大学法人では給与体系も新たに用意できるとは言え、一流の頭脳を呼ぶ前に学内の期待の星はことごとく流出していたということになれば、ランキングの上昇など夢のまた夢である。

特に、2番手集団の財政規模であれば、学内の役立たずな給料泥棒を排除する必要性や有効性は理解できる。しかし、現状で行われている施策は、有望な人材の移籍意欲を高める効果しかないという事実も受け止める必要があろう。結果的に、移籍できる優秀な人材は流出、比較劣位としての給料泥棒だけが残留し、第2集団は揃って世界のトップから取り残されるという事態を招くだろう。

引き抜きにカウンターオファーをしようにも、その手段はあまりに限定的である。例えば、テニュアトラックにある助教や講師に対して、できる対処があるとすれば、任期の繰り上げ終了とそれに伴うテニュアポストの提供くらいしかない。給料を上げる余地がほとんどない中では、昇進込みのオファーをしたいところではあるが、そうなると一気に実現に向けたハードルが上がってしまう。

まずは、トップ研究者の招聘より先に、足元の流出対策をはかることが国内の大学にとって必要なことであろう。それは国内ではトップに位置する旧帝大と言えど、国際的にはこの第2集団というべき位置であるからには、なおさら重要である。