罫線との醜い闘い
科研費申請のための書式の罫線に苦労している人は多いようで、河野太郎議員の以下のツイートに歓喜した大学関係者は多数いたと思われる。現に私もRTした。
科研費の申請書の罫線は次回申請から廃止することに決まりました。
— 河野太郎 (@konotarogomame) 2016年10月21日
科研費申請書類の問題はもちろん罫線だけではないのだが、締切直前でまさにその問題で四苦八苦している研究者が多かったということでもあるのだろう。
その後、河野議員による内閣府の窓口を紹介するツイートで、概ねこの問題は政治家から行政に投げられたことになる。
競争的資金に関する皆様のあらゆる要望は、こちらの内閣府の窓口にお寄せください。https://t.co/oLOdw34wu8
— 河野太郎 (@konotarogomame) 2016年10月25日
罫線、枠線、個人の業績の入力などに限らず、競争的資金の申請書、使い勝手、その他何でも競争的資金に関することはここが窓口になります。
それはつまり、ツイッターで太郎ちゃんにお願いするだけでなく、内閣府の窓口にきちんと提案しないと変わらない、ということでもある。みなさん、できるだけ多くの意見・要望を届けようではありませんか。
さて、Wordの申請書式の罫線がずれる問題に話しを戻すと、確かに面倒ではあるのだが、うまくやる方法もないわけではない。
特にMacユーザーからの、せっかくフォーマットを調整したのに電子申請システムにアップロードしてPDF化するとまたずれてしまう、という発言を複数目にしたが、Macユーザーであれば、wordファイルをアップロードするのではなく、プリントダイアログに出てくる「PDFとして保存…」で出力されたPDFをアップロードするべきである。そうすれば変換時の問題はほとんどが解消する。
少なくとも、科研費の電子申請システムで調書の最初のページが自動作成されるようになったことは、それまでのエクセル原稿用紙への入力を強要されていた時代からすれば大きな進化であるし、Word文書でなくPDFを直接アップロードできるようになったことも大きな改善であることに間違いはない。
とはいえ、根本的な問題解消には程遠いのが現状である。
書式そのものの問題としては、何と言っても費用の明細の部分であろう。数値を入力させるにもかかわらず小計、合計を自動的に計算出来ないような書式というのは、思いつく方がむしろ難しいのではなかろうか。そのような頭脳はある意味偉大である。
ここで自動的に計算ができないために、多くの大学で何人もの事務職員がチェック・検算していることと思うが、それは基本的に機械がすればよい仕事であろう。AI導入を声高に叫ぶより前に導入すべきプログラムがあることに気づくべきである。
また、研究代表者や分担者の研究業績、科研費の過去の受入実績、他の申請中の研究や受入予定の研究費を入力する点についても、多くの人が指摘している。研究業績はJ-StageやResearch Mapのデータを活用すればよく、科研費については期間・金額・成果など、必要なデータはすべて科学研究費助成事業データベースに蓄積されているのであるから、いずれも研究者番号で名寄せすれば済む話であり、わざわざ入力させる必要性は皆無である。
こうした指摘に対して真摯に耳を傾け、文部科学省は改革の先頭に立って、PDCAサイクルを何回でも回して、申請プロセスの改善に邁進していただきたいものである。
幸か不幸か、来年度からは科研費の審査方法が大幅に変更される。まったく期待はしていないが、文部科学省がPDCAサイクルを適切に回すことができているのであれば、申請書の作成にかかる負担も大幅に軽減されることだろう。