スーパーグローバル学部増田准教授

いかれた大学教員の思いつき

億りびと科研費の是非

山口二郎氏が研究代表者となっていた科研費が叩かれ続けている。学術創成研究費なので金額も大きい。6億円という話が果たしてどこから出てきたのか定かではないが、学術創成研究費の研究プロジェクトに限って言えば、科研費データベースを見ればわかるように、直接経費が3億6800万、間接経費が7700万となっており、5年間であわせて4億4500万円のプロジェクトであった。

KAKEN — 研究課題をさがす | グローバリゼーション時代におけるガバナンスの変容に関する比較研究 (KAKENHI-PROJECT-14GS0103)

個人的な妬み根性を含めて言えば、随分気前よく出したなというのは正直なところではある。

とは言え、この種の研究プロジェクトとして、特に過大なものであるかと言えば、そんな事はない。

例えば、同じ法学系の京大法で固めた以下の学術創成研究も、5年間で直接経費3億、間接経費9000万となっている。

KAKEN — 研究課題をさがす | ポスト構造改革における市場と社会の新たな秩序形成-自由と共同性の法システム (KAKENHI-PROJECT-19GS0103)

文系でなにに使うんだ⁉︎という指摘ももっともではあるし、好き勝手させてもらったというような不用意な発言に脇の甘さは否めないが、山口科研の参加者であった遠藤氏も書いている(遠藤乾研究室 科学研究費についていくつか)ように、少なくとも4人の若手雇用が含まれており、若手研究者育成のための人件費が含まれていることは考慮に値するだろう。少なくない部分は人件費であっただろうし、海外からの著名な研究者招聘なども考えると、人に対する投資がかなりの部分を占めただろう。成果物として書籍も多く出ているので、研究成果公開のための経費もそれなりにあったと想像される。

関連して、この学術創成研究の特性として、機関に対する補助という側面が少なからずあったであろうことも指摘しておく必要があるだろう。もちろん、複数の研究機関に所属する研究チームによる申請もあるのだが、同一所属機関で固めたプロジェクトもかなり目立つ。この山口科研も全員が北大の研究者であって、北大の法学部・研究科に対する資金援助と考えれば、まあそういうこともあるよね、といったところかもしれない。

ちなみに、山口科研の事後評価の結果は以下のリンク先にある。意見を見ると、成果を概ね高く評価しつつも、分野による成果のばらつきや、国際共同比較研究であるにも関わらず海外のトップジャーナルへのアウトプットがない点には不満が表明されている。妥当な評価と言えそうである。

学術創成研究費 | 科学研究費助成事業|日本学術振興会

研究チームの研究者は、毎年100万円単位の比較的自由度の高い研究費が使えたであろうから、成果が出るのは当然であるし、ちょっと多かったんじゃないの?という指摘はあるかもしれないが、なにに使ったのか想像できないほどの金額でもなく、若い人も育って良かったねという話なのだろうと思う。

問題はむしろ、この規模の研究費が使えるのは、非日常的な事態であるということであって、日本の大学を世界のトップに送り込む意思があるのなら、常にこの規模の投資をし続ける覚悟が必要だという認識がないことだろう。

日経新聞に言わせればすべては選択と集中が足りないせいであるが、選択はしても集中はしないのだから成果が上がらないのは当然だろう。