スーパーグローバル学部増田准教授

いかれた大学教員の思いつき

学習指導要領改訂の矢先に教員削減を要求する素敵な縦割行政

財務省文部科学省に対して、教員の削減を要求すると言うニュースが流れた。

財務省 公立小中学校の教職員 4万9000人削減案 | NHKニュース

 

少子化の進行により、今後10年間で公立小中学校教員を49,000人削減できるはずだと言う主張である。

日本の公教育では、児童生徒一人当たりの教員数は、他国と比べて特に多いわけではないが、財務省の言い分として現状を維持することは可能であると言うからには、改善する気は無いと言うことであろう。よりによって、文部科学省としてはアクティブラーニングの導入を目玉とした学習指導要領改訂の矢先にこうした話が出て来るあたり、いかにも日本的な官僚組織の連携プレーである。

少なくとも、今後のアクティブラーニングの導入や、英語教育の前倒しなどを考えれば、すでに実効性に疑問符がついている、これらの教育改革が教員削減によって完全に破綻することは目に見えている。そう遠くない未来に、ゆとり教育がもたらした以上の悲惨な未来が待っているという覚悟が必要になるだろう。財務省には文部科学省と共に教育行政の失敗を主導した戦犯の地位を引き受ける覚悟を持って予算の削減に取り組んでいただきたい。

 

もちろん、現職の教員の指導力の底上げも不可欠であることも間違いない。英語力はもちろん、アクティブラーニングで指導できる教員もごく一部に限られている。ほとんどの場合、グループで何か調べて発表してお茶を濁す、という以上の授業にはならないだろう。結果として、多くの児童・生徒に十分な知識を伝達できずに時間が過ぎると言うことになりかねない。多くの教師は、知識を伝達する技能は学んできているが、ファシリテーションの技能はおぼつかない。免許状の更新講習で新たに必要なこれらの技能を身につける研修を行うとしても行き渡るまでに10年かかってしまうし、免許法認定講習にしても、実施する資源には明らかに限りがある。

(そもそも講習を実施する側からして、アクティブラーニングや英語での講義ができる能力のある講師というのは限られている、という身もふたもない事実は、更新講習を受講した教員のみなさまはすでに理解されていることだろう。)

 

とは言え、今の教育環境を改善した方が良いことは確かではあり、人員の配置はそのための有効な方策であることも疑いの余地はないのだが、今回のような教員削減という政策の方向性に対して、まとまって声を上げる主体はほとんど無いと言ってよく、財務省としては、たいして反対されなさそうなところの予算を削るという話でしかないのである。

 

そうして、未来世代への投資よりは過去の世代に対して財政資源は投入されることになる。

 

もっとも、

教職員を増やす前に、まずはスクールカウンセラーなど外部の人材を活用してその効果を確かめるべきだと主張しています。

という点については、その通りであろう。

 

部活動のサポートなどは外部に任せるべきで、部活の指導をどうしてもやりたいという教員には、指導者への兼任を認める形にすれば良いだろう。部活は全て地域のクラブチームに移行して、指導者に正当な対価を支払えるようにすれば良い。

いじめなどの違法行為や、モンスター化する保護者への対応も、現実的には教師が対処できる問題ではなくなりつつある。教師が対応するのではなく、警察や裁判所の仕事であることを明確にした方が良い。

 

学校を聖域化することをやめ、教師の職務の範囲をきちんと制限して、定められた以上の業務に従事してはならないというくらいにするべきだろう。 

そのようなことが徹底されるのであれば、教員を削減することも不可能ではないかもしれないが、そのようにはならないであろうことが容易に想像できるのが辛いところである。