スーパーグローバル学部増田准教授

いかれた大学教員の思いつき

広大のアレのその後

一世を風靡したにも関わらず、研究費3万円にすっかり持っていかれた感のある、「広大のアレ」。すなわち教員のさまざまな活動や業績などを徹底的にポイント化して評価するという、「徹底した大学のモニタリング」である。

その後あまり話題になることもなく、なんだかすっかり影が薄くなってしまったようでもあり、どうなったのかだろうか?

前回も書いたが、文部科学省による平成27年度の国立大学法人等の評価結果には、広島大学も「注目」すべき取組に取り上げられていた。

しかし多くの大学人にとっては残念なことに、そこで取り上げられていた事項は「高度なIR分析を可能とするシステムの本格運用 の開始」であり、多くの大学関係者の期待していた「徹底した大学のモニタリング」の部分ではなかった。

資料にあげられたポンチ絵や説明を見ると、researchmapやCiNiiなどの学術データベースサイトの情報を自動的に名寄せして収集し、研究者総覧などに使われるようである。モニタリングや教員の評価にも使われるように見えるが、主要な目的としては、判断基準となる情報収集を自動化して効率化しようという意図は感じられる。もしかすると実はこれは個々の研究者にとっても便利なのではないだろうか?モニタリングの仕組みもさることながら、他の大学でも欲しいところは少なくなさそうである。研究者個人としては、徹底的にモニタリングしてもらいたいとは思わないが、例えば面倒な研究者総覧のデータ更新などが自動化されるのであれば、それは普通に嬉しいだろう。researchmapまで勝手に更新してくれればなお良いが、そういう機能はないのだろうか?いやむしろresearchmapにこそ、勝手に名寄せして業績などを更新してくれる機能があれば良いのではないか。

これを広大のアレと称された徹底したモニタリングシステムと称して資金を引っ張って実現したということであれば、広島大学の執行部は意外にしたたかなのかもしれない。研究者個々の負担も軽減しつつ、経営判断の材料を着実に増やしていくことができるシステムであるとすると、なかなか手強い執行部であるし、国立大学法人においては、そのようなシステムそのもののニーズも高そうである。やはりresearchmapには是非ともそのような機能を実装していただきたい。

とは言え、現実的には、広大のアレの導入効果のほどは現時点では定かではない。

一方、その後あまり聞かなくなったとは言いつつ、「広島大学は世界トップ100に入れるのか?」という、大変味わい深いタイトルの新書が発売されているのを発見した。何ですかこれは。

 

買って読んだわけではないのだが、ざっと見た限り、多くのページは広島大学の研究その他の紹介に割かれており、広大のアレの解説については簡単に触れているだけのようであった。

広島大学は、一橋や神戸を押し退けて、かなり背伸びをしてスーパーグローバル大学に選ばれたといって良い。徹底したモニタリングは、その代償として、国立大学法人を代表した人柱となる覚悟の表れと言えるだろう。

先の新潟大学と並んで、国立大学を舞台とした実験はこちらも始まったばかりである。その結果が明らかになるには、まだしばらく時間がかかることだろう。