スーパーグローバル学部増田准教授

理工系からこのご時世によりによって人社系に文転した大学教員の日記

自殺をめぐる不都合な真実の話

あまり気が向かない話題ではあるが、書かないわけにもいかないだろう。一橋大学のロースクールでの同性愛のアウティングに端を発する自殺について、本日開かれた口頭弁論を踏まえた記事が出ていた。

基本的に自殺したアウティングの被害者側に立った記事であるとはいえ、書かれている内容そのものはひどい話である。アウティングから自殺に至る経緯はこれまでもしばしば示されているので割愛するが、一橋大学の対応はまったく救いのないものだ。

裁判の結果がこの後どうなるかはさておき、国立大学の暗部が描かれている。

被害者であるロースクールの大学院生Aさんは、たびたび一橋大学のハラスメント窓口や保健センター、教員に相談していたという。

それにも関わらず、一橋大学の主張はなかなか大胆であると思う。

Aの死は突発的な自殺行為によってもたらされたものであって、被告大学の様々な配慮にもかかわらず防止することができなかったことは遺憾ではあるが、人知の及ぶところではない

また、新たに明らかになったこととして、

当事者であるロースクールの教員ですら、裁判になるまで、この事件のことを知らされていませんでした。ご家族が勇気を振り絞って立ち上がらなければ、永遠にお蔵入りするところでした

とのことである。分かっていてもこれはすごい。少なくとも、一橋大学には、こうした事件が起きてしまったことを教訓として、次の事件を防ぐために活かそうという意識は皆無であるということを示している。

ただしかし、学生の自殺した事実を周知・共有しないという姿勢は、必ずしも一橋大学に限ったものでもないということも指摘しておく必要はあるだろう。都心部から郊外に移転した大学をはじめとする一部の国立大学で、自殺者が少なくないことは大学の関係者の間ではよく知られている。しかし、これらの大学では、ほかの学生への配慮と言う建前もあり、基本的には自殺者が出た事実を公表すると言ったことはないのが一般的である。もちろん、学外にも聞こえてくるような話題であるからには、噂としては学生にも教員にも広まるのは当然だとは思うが、学内でも公式なルートで自殺したという事実が共有されることはないようだ。大学側としても、積極的にアピールするような内容ではないというのもわかる。

しかし、不祥事についてもプレスリリースが出されるようになった今、各大学は在学生の自殺を含む事故についてきちんと公表するべきであると思う。そうすることで、一部の大学に目立って多く発生していることや、少なからず環境に左右されているであろうことも見えてくるだろう。

自殺者が相対的に多いという事実は、大学にとっては不都合な真実ではあるが、受験生にとっては知っておくべき情報である。大学の広報には決して出てこないが、大学を選択する際に考慮すべき(したがって自ら積極的に情報収集するべき)ポイントであると思う。