スーパーグローバル学部増田准教授

いかれた大学教員の思いつき

Fラン化する大学の実態とつぶすべき大学論

これだけ文章を書く暇があるなら仕事しろと言われそうなところで久々の更新。ネタが無くなると定期的に投下される感のある、Fラン大学ではこんなとんでもない実態が!という話であるが、昨日今日と、名門一橋大学出身のフリーライター白石新氏による記事がデイリー新潮に投下されている。

zasshi.news.yahoo.co.jp

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東京デザインウィークの悲劇に触れているところは目新しいが、それ以外は特に新鮮な話題が有るわけでもなく、文部科学省から設置計画履行状況等調査(いわゆるアフターケア)において是正意見がつけられた授業について、これで大学といえるのかというお決まりのパターンである。

東京デザインウィークに関しては、本来触れておくべきことは少なくないのだが、また別の機会に譲ることとして、ここでは割愛する。

そもそも、文部科学省からアフターケアで是正意見が付けられた授業というのは、単位を付与していることに問題があるのであって、リメディアル教育として単位を付与せずに実施する分には何の問題もない。実際に、いわゆるFラン大学に限らず、それこそ全国的に名の通った入試で一定の倍率を維持している大学においても、この種のリメディアル教育無しには授業が成り立たないのが現実である。

Fラン大学だけでこような内容の授業が行われているわけではないのである。

フリーライター氏の卒業した一流大学たる一橋大学のような国立大学においてはそのような授業は必要ないと信じたい方々も多いかもしれないが、すでに十年以上前から少なからぬ国立大学がリメディアル教育を実施している。

リメディアル教育の現状〜大学アンケートから〜 Between 2001

2001年の上記の報告によれば、89国立大学のうち約20%は、「高校までの(白石氏の表現を借りれば小中学校で学ぶ内容も含む)」教科書教育復習型のリメディアル教育を実施しているのである。もはや大学とは言えない。高等教育の危機である。

ちなみに白石氏の卒業した一流の中の一流大学である一橋大学においては、文部科学省のGPに採択された事業のなかで、「レポートの書き方講習会」を開催しているありさまである。(論文の書き方ではない。)さらには、学習相談コーナーでは、成績不振学生を対象として、授業外学習時間の確保や、学習の動機づけを行うサポートをしてくれるのである。学習の動機づけのサポートまでしてくれるとは、まるで小学校のようではないか。(Fラン大学ではなく、白石氏の母校、一橋大学の学習相談コーナーの話である。念のため以下に出典を記しておく。)

http://www.rdche.hit-u.ac.jp/~gp22/GPreport2011/gp-report-1.pdf

まさに由々しき事態であるとしか言いようがない。

Fラン大学より先に一橋を潰したほうが良いのではないか?旧三商の一角を占め、文部科学省からも事務局長を現役出向で受け入れているにも関わらず、スーパーグローバルにも採択されなかった状況の中では、まったく洒落になっていない冗談はさておき、現代の大学においては、高校までの内容を改めて学習するプログラムとしてのリメディアル教育は不可欠なのである。それはFラン云々(でんでん)ではなく、大学教育全体の問題である。

Fラン大学など潰してしまえ論者の多くは、どんな学生が入学しているのかを問題にしているわけだが、そのような意味においては、推薦入試を行う全ての大学はFラン化している。すなわち、ボーダーフリー状態で一定の学力に達していない大学生がすでに国立大学や私立のトップグループ校にも大量に在籍しているのが現実なのである。

したがって、どの大学を潰すべきかという議論は、どのような学生を受け入れているかより、どのような学生を卒業させているのか?という観点から論じるべき問題なのである。

Fラン大学とひとくくりに揶揄・批判する人々には、この視点が決定的に欠けている。偏差値だけは高い(ように見える)が、まともな教育を行わず在学中にほとんど成長させることなく卒業させてしまう大学こそ潰すべきであろう。そしてそれはあなたの母校かもしれないのである。