スーパーグローバル学部増田准教授

いかれた大学教員の思いつき

国立大学の運営費交付金削減と経営危機

先の研究費ゼロ時代の記事は、運営費交付金の削減との関わりで書いたところであるが、運営費交付金の削減によって、多くの国立大学は一部の私立大学以上に経営的に厳しい状況に置かれているという事実はもっと知られて良いだろう。

たとえば、もっとも多額の運営費交付金を受け取っているのは東京大学の約800億円である。一千億円に近い、ものすごい金額であるというのは事実としてはそのとおりなのであるが、それが大学運営おいてどの程度の費用を賄うことができるのかが問題である。

では、東京大学の平成27年度の財務状況を見てみることにしよう。

東京大学の人件費は、給与・報酬等が約547億円あまり、退職手当が42億円あまり、非常勤の役職員の給与が362億円あまりである。

これの意味することは何か?と言えば、800億円もの運営費交付金は受け取っているものの、人件費を支払った時点ですでに不足しているということである。

人件費だけで不足しているということは、教育や研究にかかる費用はもちろん、施設の維持管理にかかる費用など、人件費以外のあらゆる費用は、なにかしら自己収入もしくは外部の資金を導入しなければならないということを意味する。

東京大学であれば、毎年200億円規模の科学研究費を獲得するほか、500億円を超える外部資金の受入がある。東大病院の収益も400億円を超える。授業料等は120億円程度で、それほど大きな金額とは言えない。いずれにせよ、運営費交付金補助金を合わせた国費の割合は約4割程度となっている。

しかし、東京大学では大きな金額となる外部資金や病院収益は、一般の国立大学にはとても望める金額ではない。多くの国立大学では、多くても科研費が数十億円、外部資金も10億円前後だろう。附属病院があれば100億円単位の収益にはなるが経費もまた100億単位である。

私立大学とは異なり、学生が来ないので大学が潰れるということは当面考えにくいにせよ、ほとんどの国立大学の財務状況は、そこで働く多くの教職員が持っているであろうイメージとは程遠く、すでにかなり危機的な状況にあるというのが実情である。むしろ、志願者数・入学者数に関わらず、財務状況としてすでに危機にあるということのほうが重要であり、また問題でもある。

継続的な運営費交付金の削減によって、国立大学はすでに、あるいは近い将来において、運営費交付金だけでは人件費さえ賄えないのである。

これを今の枠組みを大きく変えることなく抜本的に解決しようとすれば、授業料をある程度値上げしつつ、定員を大幅に増やして近隣の私立大学を潰しにかかるしかなくなる。だが、そのようなことが国立大学に求められているわけではない。

人員を削減し、担当コマ数も私立大学並に増やし、部局の枠を超えて授業を担当し、研究費はゼロが基本で外部資金を獲得することで研究を遂行する、それが当面これからのわが国の国立大学の姿であろう。続いて目にすることになりそうな現実としては、大学同士の合併による国立大学の再編・削減であろう。