スーパーグローバル学部増田准教授

いかれた大学教員の思いつき

地域志向の功罪

地(知)の拠点(大学COC)事業の募集や、新課程の廃止にともなう学部・学科再編等により、地域を志向した学びを実践する学部学科が雨後の筍状態である。

地方の国公立大学の生きる道として、方向性そのものは間違いではないが、問題はアクティブラーニングだ、プロジェクトだ、と言って、十分な準備もなく地域のフィールドへ学生が放たれることである。
学生だけならまだ良いが、そもそもそうしたフィールド型の教育や研究を実践したことのない教員まで一緒に放たれると目を覆うばかりの惨状となる。

「地域の皆さんにお話を聞きましょう!」
「困っていることはなんですか?」
「みんなで地域の課題を話し合いましょう!」
「どうやったら解決できるか考えてみましょう」

このような何も考えていない授業ばかりが登場し、毎年同じことが地域で繰り返されることになったりするのである。
3年目くらいにもなれば、

学生「困っていることはなんですか?」
地域「お前らの存在」

という答えも出てきそうな勢いである。

本当に困っている課題を抱えた地域があり、地域だけでは解決することは困難で、それを解決に導くだけの能力のある教員がリードするプロジェクトであれば、学生を巻き込んでやる価値があるだろう。実際、そういう教員が成果をあげているところも無いわけではない。

しかし問題は、やりたくは無いけれど地域を志向した学びを実践しなければならなくなった大学には、学生たちがなんちゃって課題解決型学習しましたという成果が出せれば良いという程度の覚悟しかないことである。

これが実際に地域の方々自身が自ら率先して課題解決に取り組んでいる地域の現場であったりすると、学生たちが大学の授業と称して入ってこられるのは迷惑でしかない。
むしろ、そのような組織には、学生をインターンとして送り込む方が双方にとってメリットが大きいはずなのだが、そのあたりの地域の実情を踏まえたマッチングやマネジメントすらまともにできないような地域系学部学科というものがこの世に少なからず生み出されていることが頭の痛いところである。

まずは学生たちと、自分たちの学部学科の課題解決から始めるのが最良の教材となるはずで、地域に出る前に学内で課題解決型学習を実践することが大学にとっても地域にとっても有益であろう。