スーパーグローバル学部増田准教授

いかれた大学教員の思いつき

インターンシップ地獄

近頃は就業力であるとか社会人基礎力であるとか、大学生が求められる力のインフレーションが加速しており、やれプロジェクトだ、やれインターシップだなんだと、OTJ的なプログラムが盛んに推奨されている。

もちろんその背景には、ほとんどの卒業生が正規の終身雇用で就職していった高度成長期には考えられないような3年離職率の高さであるとか、意識が高いだけで就社してみたら思っていた仕事と違ったというようなミスマッチであるとか、様々な理由があることは確かである。

しかし、地域でのプロジェクトにせよ、インターシップにせよ、社会に様々な歪みをもたらしていることもまた事実である。

地域系のプロジェクトの問題については地域志向の功罪 - スーパーグローバル学部増田准教授で述べた通りであるが、インターシップに関しても、多くの大学で正規の課程に取り込まれ、大量の学生がインターシップの原野に放たれてしまったことにより、企業にとっても学生にとっても、必ずしも望ましいものではなくなってしまっている。

企業からすれば、本来インターシップで受け入れた優秀な学生には、それなりの待遇を用意してでも卒業後の就職につながればメリットは大きい。

しかしながら、インターシップに参加する学生というのは、もはや一部の優秀な学生たちだけではなくなった。インターン学生を受け入れる企業からは、なぜ我々が大学の教育に付き合わなければならないのか?授業料をもらわなければ割に合わない、といった声もしばしば聞かれるようになった。

一方、企業のほうもインターシップの学生をタダで使えるアルバイトくらいにしか考えていない企業があるのもまた事実である。それでも、安い労働力を使いたい企業と、インターシップでとにかく学生を送り込みたい大学の利害が一致してしまうと、当事者であるはずの学生だけがそっちのけということになる。

そうなってくると、インターン学生にアルバイト以上の働きを求めること自体、もはや不可能というものであろう。企業から大学へはクレームの嵐というのは、当然の帰結である。

こうして、受け入れ企業、送り出す大学、インターン学生、誰も得しないインターシップ地獄が今年も各地で展開するのである。

現在の大学や企業をめぐる情勢からしてなかなか難しいとは思うが、大学側も課程に組み込んで送り出すインターン学生には責任を持ち、企業側もきちんとインターン学生を選抜し、その代わり働きに応じて報酬も出し、特に優秀な学生に対しては卒業後に向けて何らかのキャリアパスを用意するような、本来あるべきインターシップのかたちが定着して欲しいとは思う。そしてそれが歪みきった就職活動に変化を生み出すことができれば何よりである。

 

7月14日加筆

http://business.newsln.jp/news/201607131705260000.html にもあるように、インターンシップのモデルともいうべきアメリカにおいても、野放しにするとインターン学生を奴隷として使おうとする企業があることに変わりはないようだ。

タダ働きでしかインターンになれないような学生は就職できないというのもまた厳しい現実である。