スーパーグローバル学部増田准教授

いかれた大学教員の思いつき

指定国立大学の公募

以前から話題となっていた指定国立大学の公募を文部科学省が開始した。

「大学全体としてすでに国内トップレベルの研究力、国際協働、社会連携実績」があることが応募の前提条件となっており、これら三つの領域に設定されているいくつかの要件のうち、少なくとも一つが国内で10位以内でなければそもそも応募する資格がない。

個別の大学の状況を把握しているわけではないが、三つの領域すべてで国内ベストテン入りというのはかなりハードルが高いと言えるだろう。領域ごとに個別に要件がいくつか設定されているあたり、応募件数と対象校は、文部科学省としては事前に絞り込んでいるということである。

もともと国会での法案審議でも、当初は数校程度で最終的に10校程度まで拡大ということであった。本州の旧帝大東工大くらいまではおそらくカバーされているのではないかとは思うが、それ以外では北海道、九州の旧帝勢と、筑波、神戸、広島あたりの旧官立勢が果たしてどうかというところなのだろう。

個別の大学の状況までチェックしてはいないのだが、今回の応募条件設定が、北海道と九州を含む形になっているかどうか、違う言い方をすれば旧帝大のうちいくつの大学が条件を満たせるのか、ということは、文部科学省の姿勢を知る上で、良い指標である。国内に本気で世界の舞台で闘う大学を作ろうとするなら、旧帝大こそ底上げしなければならないわけで、旧帝大が自動的に応募要件を満たせてしまうようではあまり意味がないのである。

それと同時に問題は、指定国立大学になった場合の大学側のメリットは何かということである。

指定国立大学に求められるのは、ガバナンスの強化を始め、基本的にはこれまで求められてきた大学改革の枠組と大きく変わるところはない。その上で、世界の強豪を見据え、これまでの世界に誇る研究教育拠点を作る系事業に比べても、越えるべきハードルが上げられている。

その見返りとして、確かにいくつかの規制緩和が目玉として用意されてはいる。

スター研究者の招聘のための高額な報酬体系の導入や、不動産の貸出が可能になることと、よりリスクの大きな金融商品等への出資が可能であることなのだが、果たしてこれが指定国立大学法人として新たに課せられる期待や義務に見合ったインセンティブとして妥当かというのは甚だ疑問である。

優先的に資金も配分するような含みは持たせているものの、スーパーグローバル詐欺でよほど懲りたのか、具体的な資金規模にはまったく触れていない。運営費交付金とは別枠で、スタートアップ経費を配分するということだが、要するに継続的な支援をするものではないことを明言しているのである。

その結果、法改正までして導入する割には、新しい制度としては基本的には大学が勝手にリスクを取って投資すればそこから得られた利益は大学のものにして良いという程度の話であって、大きなインセンティブにはなり得ない。それどころか、むしろ多くの構成員にとっては、進んで過大なリスクを取りに行くような執行部を持った不幸を呪うことになるというのが共通の認識であろう。そのような意味においても、スーパーグローバル詐欺と同様に、指定国立大学法人になったところで大したメリットはなく、わざわざ進んで指定していただかなくても結構というような事態であるようにも思える。

もちろん、謹んで指定国立大学法人に指定していただくことで、これからの国立大学としての地位を確かなものにするという視点が重要でないとは言わない。旧帝大という暗黙の括りを代替することになる、より客観的な選別基準を作りたいということはあるだろう。

そのようなことを考えると、蓋を開けてみれば、なんと本州の旧帝が一つも応募していない!というようなオチに期待したいところではあるが、それはさすがに無茶な期待というものなのだろう。